道端のノート。

僕の好きな詩を少しづつ載せてみたり、自分の詩を載せてみたり、
唯のくたびれたノートの1ページです。



2010/06/29

眼にて云う


だめでせう
とまりませんな
がぶがぶ湧いているですからな
ゆうべから眠らず血も出つづけるもんですから
そこらは青くしんしんとして
どうも間もなく死にそうです
けれどもなんといい風でしょう
もう清明(春)が近いので
あんなに青空からもりあがって湧くように
きれいな風が来るですな
もみじの若芽と毛のような花に
秋草のような波をたて
焼痕のある藺草のむしろも青いです
あなたは医学会のお帰りか何かは判りませんが
黒いフロックコートを召して
こんなに本気にいろいろ手当もしていただけば
これで死んでもまずは文句もありません
血がでているにかかわらず
こんなにのんきで苦しくないのは
魂魄なかばからだを離れたのですかな
ただどうも血のために
それを言えないがひどいです
あなたの方から見たらずいぶん
さんたんたる景色でしょうが
わたくしから見えるのは
やっぱりきれいな青空と
すきとおった風ばかりです



         宮沢賢治