道端のノート。

僕の好きな詩を少しづつ載せてみたり、自分の詩を載せてみたり、
唯のくたびれたノートの1ページです。



2011/10/31

アホウドリ

船乗りしばしば慰みごとに、

生け捕るよ、大きな海鳥、アホウドリを。
     
こいつは海路の呑気な相棒、
 
深い淵の上をすべりゆく船につきまとう。……



こいつもひとたび甲板に降りれば、

青空の王者だったのが、ヘマで、ノロマで。

白い大きな翼をダラリと垂らして、

オールのように、左右にひきずる。


           
翼ある旅人、それが何と不様で愚図なこと!
                
さっきまで美しかったのが、醜く、滑稽で!
 
煙管の端で嘴を突っつかれたり、

跛の動作で不具の真似をされたりして!



詩人は似ている。この雲上の王子に。──
  
荒天を往来し、射手を嘲りはするものの、
        
地上に追われて、罵声に囲まれれば、

巨大な翼も、歩く邪魔になるばかり。




       シャルル・ボードレール

2011/10/12

風がおもてで呼んでいる

風がおもてで呼んでいる
「さあ起きて
 赤いシャツと
 いつものぼろぼろの外套を着て
 早くおもてへ出て来るんだ」と
風が交々叫んでいる
「おれたちはみな
 おまえの出るのを迎えるために
 おまえのすきなみぞれの粒を
 横ぞっぽうに飛ばしている
 おまえも早く飛びだして来て
 あすこの角ある岩の上
 葉のない黒い林のなかで
 うつくしいソプラノをもった
 おれたちのなかのひとりと
 約束通り結婚しろ」と
繰り返し繰り返し
風がおもてで叫んでいる



      宮沢 賢治