道端のノート。

僕の好きな詩を少しづつ載せてみたり、自分の詩を載せてみたり、
唯のくたびれたノートの1ページです。



2010/03/21

私達の 暮らしは


目覚めると
まずは 揺すって見る
息の かぼそい 弟を

となりの チョルのように
永久の 眠りに つきそうだから


オモニの 帰りが 遅いと
風の音にも 耳を そばだて
胸さわぎして

夜通し
眠れぬままに 夜を明かす

井戸のある家の おばさんの ように
自殺したのではないかと

わたしたちの 暮らしは
ただ生きるのではない
生き残る ことなのだ


 
       チャン ジンソン(張真晟)

張真晟は北朝鮮の詩人です。この人の詩集、「 わたしの娘を100ウォンで売ります」を読んだとき、どんな映像や記事よりも北朝鮮の現在の在り方が生々しく泥に手を突っ込んだ様に伝わりました。
詩による伝達の威力の凄さを、ある意味初めて気付かせてくれた詩人と詩集です。

この詩集の中からもう一つ、載せておきたい詩が一編あります。

     

       わたしたちの ご飯は


わたしたちの ご飯は
米の ご飯では ない

木の皮だ

わたしたちの ご飯は
山で 育つ
岩を 裂き 育つ
口に するには あまりに 痛い
わたしたちの ご飯は 痛い

分厚い 木の皮

貧しさを ぐつぐつと
煮立て
取り出しては 死ぬほどに 
槌うち
また 煮詰め 槌うつ
首を 絞める 荒縄のよう
かならず 入れるのは
苛性ソーダ
こうして ようやく
どろどろの 木の皮

それでも ご飯だと
椀に 盛るために
わたしたちは 木で
ご飯を つくる
ため息の 中で
ご飯を つくる

ああ そうしてできる
その いくつかの 塊は
わたしたちの 涙の 結晶
見るほどに 締めつけられる
のど元

こんな 飯が どこにある
その 飯すらも ない
食って生きる 全世界の
生命たちよ
この国では 山の ことごとくが
裸になっても
それでも 木が 足りず
数百万人が

飢えて 死んだ



          

  

2010/03/15

助言


みんな、云っとくがな、
生まれるってな、つらいし
死ぬってな、みすぼらしいよ

んだから捕まえろよ
ちっとばかし 愛するってのを
その間にな。


      ラングストン・ヒューズ(Langston Hughes)

2010/03/12

まぐさ(Hay for the Horses)


その男は夜の半分をかけて
はるか遠いサンワキーンから
マリポーザを通過して
危険な山道を登って
朝の八時トラックの荷台に
干し草を満載して
納屋の裏に到着した。

われわれはウィンチとロープと
手鉤を使って暗い納屋のなかで
粗い目のレッドウッドのたるきに届くまで
高々と干し草の梱を積んだ。

アルファルファのきれっぱしが
屋根板の隙間の光に舞った。
干し草のほこりが汗ばんだシャツと
靴に入りこんで痒かった。

昼飯どき外の暑い馬囲いの
ブラック・オークの木陰のしたで、
老いた牝馬は昼飯の桶に鼻づらをつっこみ
きりぎりすが草むらで鳴いているとき、
男は言った、「おれはいま六十八だ。
干し草運びを始めたのは十七のときだった。
やりだしたその日に思ったもんだ、
一生こんなことをするのは御免だって。
ひでぇもんだ、おれはそればっかり
やってきてしまった。」


         ゲアリー・スナイダー(Gary Snyder) 

2010/03/10

あの頃、冬の日曜日には(Those Winter Sunday)


日曜日も、父は朝早く起き出し
薄暗い寒さの中で服を着て
毎日の力仕事と寒風に
ひび割れた手で、埋めておいた火を起こす。
誰もありがとうと言ったことがない。

目覚めると、寒さがぱちぱちと音を立てるのが聞こえたものだ。
部屋が暖まると、父が声をかけてくれる。
あの家の、いつ爆発するとも知れない怒りを恐れつつ
おれはゆっくり起き上がり、着替えるのだ。

そして、寒さを追い出し、
よそいきの靴を磨いてもくれた父に
そっけない挨拶をしたものだ。
愛の厳粛で孤独な任務について
一体おれは何を知っていたのか、一体何を?

          
            ロバート・ヘイデン(Robert Hayden)


親父の事はここ数年、よく考える様になった。
やり方は違ったが、感じ方はよく似ている私の親父は自分の道より
女をとり、家族をとり、今では良き家長として我が家を治めている。
たまに親父と一緒に旅をする夢を見る。
同じぐらい大きなリュックを背負って、地下鉄のホームに立っていてこれまた大きな地図を二人で眺めてる、
たしかそんな夢だった。だいぶうろ覚えですけど。

2010/03/09

青い目(Blue Eyes)


まだ赤ん坊みたいな肉付きの
ミルクの匂いのする女の子らとくらべれば
彼女はりっぱなものだ。
朝、自分の年齢も、自分の子供らも、踏んずけて、
ベットから大股で抜けでてくるとき
青い目がきらっと警告を発する。

「この男たちまとめていい気分にしてやれるわ」
彼女は「ニューヨーク・レヴュー・オブ・ブックス」の
恋人募集欄から目を上げていった。

戦争、災害、背筋の冷える
不安の記事を
読んでやると、
青い目は揺らぎ、いかにも
アメリカの子らしく眠る。

「これまでで最高でしょ?」
彼女はかれのかたわらに滑りこみながら言った。
青い目はかれの惨めな年齢を笑っている。

濃い霧を通して波の寄せる音がする。
湿気が網戸の窓から流れ込む。
「すてきな愛の詩って、まだなの?」
彼女はせがみつづける。

眠るまえ彼女はかれの頭のなかの
詩の一行だった。
そのままにしておきたかったのだが、
いまはもう消えてしまった。


          ハーヴェイ・シャピロ(harvey shapiro)
          訳:沢崎 順之助

記念すべき一発目はこの詩にしました。ぼーっと外の雨を眺めているとき、何となくしっくりしたからです。
隣ではルームメイトの外人がなんやら口喧嘩しています。
今日は猫も鳥も雨宿り。ビールでも飲んでゆっくりしよ。

これからもこんな感じで詩や文章の一小節でも紹介出来たらな、と思ってます。どうぞ宜しく。