道端のノート。

僕の好きな詩を少しづつ載せてみたり、自分の詩を載せてみたり、
唯のくたびれたノートの1ページです。



2010/04/20

オレンジ(oranges)



初めて女の子といっしょに
歩いたのは、十二のときだった。
外は寒くて、ジャケットの中の
二つのオレンジが重かった。
十二月。足の下で
霜柱が音を立てた。白い息を
吐きながら、彼女の家の方に
歩いて行った。昼も夜も、
どんな天気の日にも
黄色い門灯がついている家だった。
犬がおれを見て吠えた。やがて
彼女が手袋をはめながら
出てきた。ルージュをさした顔が
微笑んでいた。おれも笑みを返し
肩にそっと手をのせ、先に
立って通りを歩き、
中古車置き場と
植えたばかりの並木を横切った。
やがておれたちはドラッグストアの前で
白い息を吐いていた。中に
入った。小さなベルが鳴って、
両脇に商品の並んだ通路から
店のおばさんが出てきた。
生地が段々に重なった
お菓子の方を向いて、
何が欲しいか彼女にたずねた。
目がきらっと光って、口元が
ほころび始めた。おれは、
ポケットの中で五セント玉をもてあそんでいたが、
彼女が十セントのチョコレートを取った時も
黙っていた。
おれはポケットから、五セント玉と
オレンジ一個を取り出し、
何も言わずにカウンターの上に
置いた。顔を上げると
おばさんの目とおれの目が合った。
どういうことか、よく分かってくれているその目が
おれの目を
見詰めていた。

外に出た。
時々車が横を通り過ぎた。
古いコートのような霧が
木と木の間にかかっていた。
おれは彼女の手を握って
二ブロック歩いた。
手をはなすと
彼女はチョコレートの包み紙を破いた。
おれは残ったオレンジの皮をむいた。
オレンジは灰色の十二月を背景に
とてもまぶしかった。
ちょっと離れたところにいた人は、
両手の中で火を起こそうとしていると
思ったかもしれない。



           ゲアリー・ソオト(Gary soto)