道端のノート。

僕の好きな詩を少しづつ載せてみたり、自分の詩を載せてみたり、
唯のくたびれたノートの1ページです。



2010/03/12

まぐさ(Hay for the Horses)


その男は夜の半分をかけて
はるか遠いサンワキーンから
マリポーザを通過して
危険な山道を登って
朝の八時トラックの荷台に
干し草を満載して
納屋の裏に到着した。

われわれはウィンチとロープと
手鉤を使って暗い納屋のなかで
粗い目のレッドウッドのたるきに届くまで
高々と干し草の梱を積んだ。

アルファルファのきれっぱしが
屋根板の隙間の光に舞った。
干し草のほこりが汗ばんだシャツと
靴に入りこんで痒かった。

昼飯どき外の暑い馬囲いの
ブラック・オークの木陰のしたで、
老いた牝馬は昼飯の桶に鼻づらをつっこみ
きりぎりすが草むらで鳴いているとき、
男は言った、「おれはいま六十八だ。
干し草運びを始めたのは十七のときだった。
やりだしたその日に思ったもんだ、
一生こんなことをするのは御免だって。
ひでぇもんだ、おれはそればっかり
やってきてしまった。」


         ゲアリー・スナイダー(Gary Snyder)