道端のノート。

僕の好きな詩を少しづつ載せてみたり、自分の詩を載せてみたり、
唯のくたびれたノートの1ページです。



2011/10/12

風がおもてで呼んでいる

風がおもてで呼んでいる
「さあ起きて
 赤いシャツと
 いつものぼろぼろの外套を着て
 早くおもてへ出て来るんだ」と
風が交々叫んでいる
「おれたちはみな
 おまえの出るのを迎えるために
 おまえのすきなみぞれの粒を
 横ぞっぽうに飛ばしている
 おまえも早く飛びだして来て
 あすこの角ある岩の上
 葉のない黒い林のなかで
 うつくしいソプラノをもった
 おれたちのなかのひとりと
 約束通り結婚しろ」と
繰り返し繰り返し
風がおもてで叫んでいる



      宮沢 賢治