桜の花びらを陽気にさせる
なんとも生暖かい風が
例外なく僕の細胞のすきま 奥深くまで入ってくる
体は覚えている この感覚
目の奥や足の裏にはもう 冬は少しこびりついているだけ
僕はこのありあまる喜びの隙間をぬけ
まだ冬の香りのする服やノートやチョコレートなんかを
身に余る大きなバッグにつめ
空を仰ぎ背伸びする人達のあいまをぬって
今 間もなく旅に出る、春を踏み台にして。
すべての僕の
飲みかけの酒、脱ぎっぱなしのズボン、
散らかした玩具、途切れないつたない会話は
そのままにしておいてほしい。
贅沢な話だが、いつでもそれをたよりに帰ってきたいんだ。
松林 千早